首里・那覇方言音声データベース

首里・那覇方言音声データベース概要

データベースのコンテンツ(内容)

本データベースのコンテンツは,国立国語研究所編『沖縄語辞典』(大蔵省印刷局,1963)を基礎にして,沖縄言語研究センターが次の作業を行いました。そのうち,1と2,および3の一部は那覇市教育委員会による委託事業「那覇市方言記録保存事業」(1988年〜1993年)による沖縄言語研究センターの仕事として行なわれています。4と5,および3の大部分が今回のプロジェクトで新たに行われた作業です。

  1. 『沖縄語辞典』の見直し
  2. 那覇民俗語彙の追加
  3. 首里方言による用例の追加
  4. 文字資料のデータベース化
  5. 音声の録音とデータベース化 ⇒首里・那覇方言録音作業について

『沖縄語辞典』の見直し

この作業は,国立国語研究所の所員として『沖縄語辞典』の編纂にあたった上村幸雄(現沖縄言語研究センター代表・沖縄大学教授)の発案によって開始されています。

(1) 首里那覇方言方言話者による語彙の確認
『沖縄語辞典』の稿本の原著者の島袋盛敏氏よりも50歳ほど若い現在の首里方言話者である久手堅憲夫さん(1933年首里池端町生まれ),伊狩典子さん(1931年首里儀保町生まれ)のお二人に『沖縄語辞典』収録のすべて(約1万3千語)の語彙について,音声,アクセント,意味,用法に変化が見られないか,などの使用状況の確認を行ないました。また,新たな語彙,用例の補充も行なっています。
(2) 那覇方言話者による語彙の確認
那覇方言話者の福地唯方氏(那覇市下泉町出身,1907年〜1991年)にご自身の内省に基づき『沖縄語辞典』に収録されている約1万3千語の首里方言の語彙とその意味,発音,用法などを那覇方言のそれと比較し,異同をチェックしていただきました。その結果は次のように分類されています。
  1. 『沖縄語辞典』収録語で那覇方言では不使用の語彙
  2. 『沖縄語辞典』収録語で那覇方言では使用不明の語彙
  3. 『沖縄語辞典』収録語と同意だが語形のことなる那覇方言の語彙
  4. 『沖縄語辞典』収録語と同形だが意味のことなる那覇方言の語彙
  5. 『沖縄語辞典』未収録の那覇方言の語彙
(3) かなによる表記
『沖縄語辞典』の当初の原稿には原著者である島袋盛敏氏によるかな表記がなされていましたが,出版に際して諸般の事情によってかな表記が削られていました。方言語彙が音韻表記によってしか表記されていないため,一般の人々の利用にとって必ずしも便利ではありませんでした。「那覇市方言記録保存事業」では『沖縄語辞典』に示されているかな表記と音韻表記の対照表をもとに方言語彙と用例にかな表記を付す作業を行いました。 ⇒首里・那覇方言表記

那覇民俗語彙の追加

「那覇市方言記録保存事業」では,『那覇市史−那覇の民俗 資料編第2巻中の7』(那覇市企画部市史編集室,1979)から民俗に関する方言語彙を抜き出し,調査する作業を行ないました。作業にあたっては,抜き出された語彙を崎間麗進さん(那覇市上泉町出身,1921年生まれ)に,発音してもらい,崎間麗進さんの内省に基づいて解説してもらい,それを辞書の項目になるよう整理する作業を行ないました。この作業は現在も琉球大学法文学部の国際言語文化学科日本文化専攻の「琉球方言学特講」の講義として続けられています。

本プロジェクトでは,受講した学生たちによって整理された民俗語彙のうち,約1800語について,崎間麗進さんと外間美奈子(沖縄言語研究センター),仲村優子(同)が意味と語形の確認などの作業を行なったうえで録音し,データベース化して公開しています。

『沖縄語辞典』について

『沖縄語辞典』は,1963年に出版された首里方言の辞典で,琉球方言の最初の本格的な方言辞典です。

首里方言は琉球方言の標準語ともいえる位置にあった方言で,国語学・方言学その他の観点からみてきわめて価値のある方言であるが,その本格的な辞典というものはこれまでにまったくなかった。氏(島袋盛敏)は自身の語彙をはじめ,夫人とし氏(1892年生まれ,首里出身)の語彙,当時まだ健在であった夫人の母堂ツル氏(1863年〜1947年)そのほかの人びとの語彙を収集した。首里方言は,廃藩による身分制の撤廃,普通教育による標準語の普及,近隣の那覇市の発展,第二次大戦による戦禍などの著しい社会変動のため,明治の中ごろまでの比較的純粋な形は今日ではほとんど聞くことはできないと言われる。したがって,もし島袋氏の仕事がなかったならば,明治以降の大きな変動を受ける以前の首里方言の語彙のかなりの部分がおそらく永久に記録されないまま失われたであろう。また,氏が当時の教養ある階級である首里の士族の家庭に生まれ,育ったこと,氏の育った家庭が廃藩当時の社会改革に際して首里王府を支持する保守派に属したため,氏が進歩派士族や平民の場合よりもいっそう首里の旧来の習俗に親しみつつ育ったこと,氏が1931年以後東京に移り住んだためかえって近年の首里方言の変化をこうむらずにすんだこと,両親,夫人とも首里出身であったことなどは氏の首里方言の純粋さを保つ上で有利であったといえよう。

たまたま国立国語研究所が1948年に創設された際,評議員の柳田国男が研究所の委託研究の対象として島袋氏の研究を推薦し,研究所は,昭和23年度・24年度の両年度にわたって島袋盛敏氏に研究を委託した。島袋氏は,昭和25年度には研究所に非常勤職員として勤務して,昭和26年(1951年)3月に見出し語1万2千以上,原稿用紙(400字)で1856枚に及ぶ稿本を完成した。

(「編集経過の概要」『沖縄語辞典』2頁)

この島袋盛敏氏の稿本に言語学的な検討を加え,また,比嘉春潮氏などの協力を得て,1963年に出版したものが『沖縄語辞典』です。国立国語研究所の地方言語研究室で編集を担当したのが上村幸雄(沖縄言語研究センター代表・沖縄大学教授)です。

この辞典には首里士族男子に固有の発音が残されています。また,島袋盛敏氏が琉球文学,芸能の研究者であったため,組踊や琉歌に使用されている文語・雅語も多く収録されています。

首里那覇方言音声データベースの項目

見出し語について

本データベースの見出し語には,単語,および単語より小さい単位の助詞,接頭辞,接尾辞があがっています。いずれも,カナ表記と音韻表記,アクセント型,品詞,意味の記述(標準語訳)がついています。標準語訳とは別に標準語(現代語や古代語)との対応語形が漢字で表記されて[ ]のなかに入っていることがあります。古語,新語,幼児語,文語などの語種が略号で示されている語もあります。

原則としてすべての見出し語について男女の音声が聞けるようになっています。男性(久手堅憲夫氏)の音声にはが,女性(仲里政子氏)の音声にはがあてられています。助詞や接頭辞,接尾辞など単独で発音しにくいものについては音声のないものがあります。

カナ表記と音韻表記⇒首里・那覇方言表記

アクセントについて

『沖縄語辞典』のアクセントの記号をそのまま使用しています。◎の記号は平板型のアクセントを,㈰の記号は下降型のアクセントを表しています。新たに追加された単語についてはアクセント型を表示していません。また,『沖縄語辞典』記載のアクセント型と話者の実際の音声にズレのある場合もありますが,そのままにしています。 

品詞について

見出し語の品詞について,首里那覇方言音声データベースと今帰仁方言音声データベースの間で品詞の統一を行っていません。首里那覇方言音声データベースの品詞は,『沖縄語辞典』の品詞分類をそのまま継承しています。

名詞自動詞他動詞形容詞連詞
副詞連体詞接続詞感動詞助詞
慣用句接頭辞接尾辞  

例文

例文にも見出し語と同じようにかな表記,音韻表記,標準語訳を表示しています。また,その例文に琉歌や組踊などの文語があがっているとき,[ ]の中に伝統的な漢字かなの表記で表示しています。


【参考文献】

  1. 国立国語研究所編1963『沖縄語辞典』大蔵省印刷局
  2. 大城立裕1992「国立国語研究所編『沖縄語辞典』」(『新沖縄文学 特集沖縄・戦後の知的所産』沖縄タイムス社)
  3. 上村幸雄1984「仲宗根政善『沖縄今帰仁方言辞典』」(『言語研究85号』日本言語学会)
  4. 沖縄言語研究センター1994『那覇の方言−那覇市方言記録保存調査』沖縄言語研究センター研究報告3
  5. 沖縄言語研究センター1994『那覇の方言−那覇市方言記録保存調査』沖縄言語研究センター研究報告4
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